※5月18日追記
今日は少しまじめな話で投稿します。
皆様もご存じだと思いますが、アメリカとイランの戦争によってホルムズ海峡が事実上封鎖されています。遠い国や地域の出来事だと思っていたら、塗料用シンナー、トルエン等が値上がり…。
なぜ、ホルムズ海峡が封鎖するとこのようなことになるのか?
石油(原油)、シンナー、ナフサの関係
私たちが普段「石油」と呼んでいるものは、地中から採掘した原油を精製することで、ガソリン・灯油・軽油・重油などさまざまな製品に分けられます。その精製過程で取り出される成分のひとつがナフサです。
ナフサはそのままでは使い道が少ないため、さらに化学処理を加えることでトルエン・キシレン・ミネラルスピリットといった有機溶剤に変えられます。これらを用途に合わせて配合・調整したものが、現場で使うシンナーです。
「石油(原油)→ 精製 → ナフサ → 化学処理 → シンナー」という精製過程なので、石油(原油)がなければ、ナフサが生成されずシンナーが作られません。
日本の石油(原油)とナフサも輸入の割合
日本は、石油もナフサも輸入の割合が非常に高いです。
石油は、中東依存度は2025年に約94%に達しており、ホルムズ海峡を経由した石油輸入量は9割にのぼります。また、ナフサは約4割を国内で生産し、約4割超を中東から輸入、残る2割をその他の地域から輸入しています。
このように、ホルムズ海峡が封鎖してしまうと、石油9割、ナフサ4割が入ってこない状況になり、今起きているようなシンナー不足に繋がります。
建築現場では色々なところでシンナーが使われる
40年ほど前は、屋根も外壁も溶剤塗料(シンナーによるうすめ液)を使用していました。
溶剤塗料を使うメリットとしては、乾燥が早い、耐久性が良い、などの理由が挙げられます。その一方、引火しやすいデメリットがあり、溶剤で汚れたウエス(業務用の布)を重ねて保管すると自然発火する可能性がある事から、第四種危険物に該当します。
さらに、施工中のシンナーの匂いも近隣からのクレームになることから、水性塗料が主流になった経緯があります。
ただ、屋根は外壁の1.5倍劣化が早く進む環境下(紫外線や熱の影響)のため、水性塗料だと塗膜が層間剥離することがあり、溶剤塗料に逆戻りしています。
その他、鉄部には水が弾くのと同じ様に、水性塗料では相性が悪い素材もあります。
以上から塗装工事ではシンナーを使用する材料は不可欠となっています。
実際の各メーカーからの通知
以下の画像は、3月19日に日本ペイントから届いたシンナー類75%値上げの通知です。

以下の画像は、アイカ工業から届いたシンナー各種の注文一時停止の通知です。

このように、ホルムズ海峡の事実上封鎖の影響がまずシンナー類に出ました。
その後、ユニットバスも納期の回答ができないとのことに…

建築現場では、お客様と契約しているが「商品が届かないため、工事を先延ばしするしか方法が無い」などなど、顔面蒼白状態です。
各メーカーからの発表まとめ
4月16日:日本ペイント 塗料本体10〜20%・シンナー15〜25%追加値上げ
4月14日:アステックペイント 受注残1,000件超・受注一時停止の可能性を警告
4月14日:オート化学工業 全製品のリードタイム延長
4月13日:エスケー化研 溶剤下塗り・錆止め 受注停止
4月13日:TOTO システムバス・ユニットバス・トイレユニット全シリーズ 新規受注停止
4月13日:日新工業 防水材料全般 出荷停止
4月13日:関西ペイント シンナー類 出荷統制・50%以上値上げ実施中
4月07日:エスケー化研 水性塗料を含む全塗料の値上げ発表(5月11日出荷分〜)
3月25日:ロックペイント シンナー類 出荷量制限・価格30%以上値上げ
3月19日:日本ペイント シンナー類 75%値上げ
では、本当に石油やナフサが入ってこないのでしょうか?
私が色々と調べたところ、日本の石油の備蓄は254日分から230日程度に減っただけです。というのも、政府はホルムズ海峡を通らないアメリカ産石油の輸入を3倍から4倍程度に増やし、紅海ルート(インドのタンカーと契約)で石油を確保しているようです。
また、ナフサは国内生産4割、中東から4割、その他2割ですが、オーストラリアで日本が開発している天然ガスの副産物として代替えナフサ(コンデンデート)が1日に10万バーレル程度、確保できるようです。
では、なぜ建築現場では実際にシンナー等が手に入らないのか…
1.パニック買い
ユニットバスが値上がりするであろうと踏んだマンション建設の多くの会社が「値上がりする前に確保すべき」と、1年先の受注分まで一斉に大量発注をかけた事で塗料の供給不足(ユニットバスに使用する)に陥ったようです。
その不安は住宅メーカー、塗装店、防水店といった中小の専門店も同じことで、集中した受注は当然、原料も製造も追いつかない(不足)ことになります。
2.他の国のナフサ不足の影響
日本は、塗装・防水工事で使う石油製品を全て国内で製造している訳ではありません。海外での生産に頼っている商品は、その国の石油・ナフサの備蓄に余裕がない国も多く、そのような国からの輸入品については今回のナフサ不足の影響を受けやすい状況にあります。
3.マスコミ等の報道
少し前にマスコミの報道により、6月にはナフサが枯渇するとの報道がありましたが、首相がXで報道を誤情報として否定しました。誤情報が広がると更なる混乱が広がるため、異例ともいえる発信です。
また、旭化成や他の民間会社からも「物の調達は当面問題が無い」と発信しており、民間の会社の意見を聞いても政府の話しが正しいだろうと判断できます。
今後、どのようになるのか?
今後、どのようになるのか?については、現段階ではまだわかりません。現在は、シンナーもシーリング材、マスカーなども手に入りにくい、または大幅な値上げになっています。
ただ、色々なことが絡まって目詰まりを起こしている流通は、経産省が動き目詰まりを調整してくれるようです。実際、ユニットバスのメーカーが出荷停止になりましたが、経産省が調整を行いユニットバスの出荷ができるようになったようです。

このサイトでは、しばらくの間、最新の情報がわかり次第掲載していこうと思います。
2026年5月18日 追記
ナフサ不足の前回の続きです。まず経産省のXやリフォーム産業新聞の発信を見てみると、政府や官僚の方が頑張って確保していることがうかがえます。
■経済産業省
赤澤大臣は第7回 #中東情勢 に関する関係閣僚会議に出席。原油の代替調達は、5月の6割から6月は7割以上に増加見通しで、シンナーや接着剤の流通目詰まりも各地方の経済産業局・整備局で連携し対応することを報告。国民の命と暮らし、経済活動に影響が生じないよう、万全の対応を講じます。#meti_daijin pic.twitter.com/BvuEzG8zFY
— 経済産業省 (@meti_NIPPON) May 12, 2026
■リフォーム産業新聞

では実際の現場レベルでは改善されたのかというと、日本ペイントは5/9日から出荷予定が6/1以降まで一部受注停止。さらに、6/1以降20%~30%の値上げします。

また、SK化研は受注再開未定(一部)、オートン化学受注再開未定(一部)、ロックペイントは前年実績により販売する出荷規制とのこと。
建築現場では原油の輸入に対して「国が嘘を伝えているのでは?」などと、都市伝説級の不信感をつのらせる人もいますが、SNS等が発達した現代では現場の声やマスコミを黙らせる事は不可能です。(SNS等の利用制限やアクセスを遮断でもない限り)
では何が一番の原因かというと、やはり中東情勢の不安から個々の会社が在庫を大量にストックすることで起きる目詰まりが一番の原因だと私は思います。
根拠として塗料メーカー受注停止商品の品目にあります。日本ペイントの商品では、アンダーフィラー弾性エクセル、水性カチオンシーラー、パーフェクトフィラー、パーフェクトサーフ、パーフェクトベスト、ハイポン20デクロ等の下塗材が主な受注停止商品です。
これらを聞いても一般の方は分からないとは思いますが、先ほど上げた材料はすべて屋根・外壁の下塗材です。上塗材はお客様の好みにより色が多岐にわたるため、ストックが出来ないというかストックしても中東情勢が落ち着く頃には大量のデットストク(不良在庫)となる危険性が高いことから、個々の業者は容易に大量発注する事は避けるはずです。
しかし、下塗材は無色透明や白色なので上塗を何色に塗っても問題が無いので大量のストックが可能です。これが下塗材中心に材料が入ってこない理由と考えられます。(上塗材は発注してから日にちはかかりますが、現状は入荷可能)
中東情勢が落ち着かない限り現状は続くであろうし、状況が落ち着いたとても一度上がった材料は簡単には下がらないと考えられます。
さらに、この数年以内に自宅の塗り替えを考えていたユーザーが「価格が上がる前に塗り替えを済まそう!」との駆け込み需要もあり、塗装業者が材料ストックを増やす原因となっている様です。(契約後に金額が上がる事をお客様に伝えにくいという心理が働きます)
「メーカーが値上げをしない」もしくは中東情勢が落ち着いたら「上げた材料を値下げする」といえば、少しはこの騒動もマシになるとは思いますが、たぶん…無理でしょうね…


















