「火災保険で外壁塗装が0円」には注意!
最近、「火災保険で外壁塗装や雨漏り修理が無料で出来る!」等の広告や営業が多いようです。私のところにもお客様から「火災保険を活用して雨漏り修理が出来ますか?」との相談があるので、この事について私の見解を述べたいと思います。
結論から言うと「火災保険で外壁塗装や雨漏り修理が0円」という業者には注意してください。
目次
火災保険とは
火災保険とは、住宅が火災にあった際に損害が補償される保険です。実は、火災以外にも落雷・破裂・爆発・風・ひょう・雪などの損害を補償し、契約内容によっては室内の家具等の動産の損害についても対象となります。ようするに、火災だけでなく、住まいの損害に対し総合的に対応できる保険です。
住宅用の火災保険の種類
火災保険に加入していれば全てが安心と思いがちですが、保険の種類によりカバー出来る範囲がかなり変わってきます。住宅用の火災保険の種類は、大きく分けると以下のように3つに分けられます。
1.住宅火災保険
住宅火災保険は、災・落雷・破裂・爆発・風災などの損害を補償できる、もっとも保証内容が狭い保険です。
2.住宅総合保険
住宅総合保険は、上記の住宅火災保険+水害・動産・盗難などの補償内容を広げた保険です。
3.オールリスクタイプ
オールリスクタイプは、上記の住宅総合保険よりさらに広い範囲で補償する、もしくはカバーが出来る保険です。これまでの保険は時価(現在の価値)によって算出される事から家の再築と保険金との間に開きが出ますが、オールリスクタイプは再取得を基準に保険額を設定するため、実際の損害が補償されます。ただし、各社の独自性がある事から、詳細は担当する保険会社に詳しく聞く必要があります。
火災保険が適用にならないとき
火災保険は「火事で家が燃えてしまった」「隣からの飛び火で火災になった」もしくは「台風で屋根や瓦が飛んだ」などの物的損害が出た時に適用される保険です。そのため、経年劣化等の通常の屋根や壁の痛みには火災保険は適用されません。
また、建物を建てる際の瑕疵についても火災保険の範囲には入りません。例えば、台風の日に雨漏りが発生したとします。当然、火災保険の適用範囲だろうと考えますが、もし台風により建築当初の瑕疵が原因で雨漏りが発生した場合は、火災保険の対象にはなりません。
この場合は瑕疵保険の対象になります。瑕疵保険についてはこちらで説明しています。
建築から10年未満の建物は、品確法による10年保証(瑕疵保険)の適用になります。注意(台風が原因?瑕疵が原因?・・・このあたりの線引きは、保険会社や建てた施工店などの解釈により捉え方が変わります)
実際に私の元へ相談があった事例
大阪府では2018年の台風で広範囲に被害が拡大した事から、火災保険による風水害に適用できることが多く広まりました。火災保険のおかげで助かった方も多いはずです。いざという時に頼りになる火災保険ですが、制度を逆手に取り悪用する業者が増えたように思われます。
これからお話する内容は、実際に私の元へ相談があった事例です。
ある日「保険を活用したい」と、お問い合わせがあり自宅に伺ったところ、明らかに経年劣化によるスレート葺き屋根材(カラーベスト)の不陸(反りや凹凸)でした。
お客様の意向ではあるものの、火災保険の対象としては無理がある事から「失礼ですが台風では無く経年劣化だと思いますよ。」と伝えたところ、お客様が大きくうなづかれて「やはりそうですよね。」と納得された様子。
なぜ、保険を活用したいと思ったかを聞いてみると。、訪問で来た営業マンが「屋根材が台風により反り返っているので、このままでは雨漏りが発生する」とのこと。さらに、「火災保険を使えば0円で修理ができます」と伝えたようです。
訝(いぶか)しく感じたお客様は、「なぜ屋根材が強風雨により破損せずに反り返ったのですか?」と聞いたところ、意味不明な説明を繰り返したことで不安に感じ、私に問い合わせたようです。
いっけん、0円でリフォームが出来るなら、お得な様にも感じられますが、保険はあくまでもそれ相当の損害があった場合の話です。営業マンが保険会社に適当な作り話を伝えるのも業者の勝手のように思われますが、一つ間違えると家の持ち主であるお客様が、詐欺(虚偽の申請)の片棒を担いだような話として、保険会社が受けとめないとも限りません。
タダより高くつくものはない
もし保険が下りたとしても、業者が法をスレスレのことをして仕事を受注しようとする姿勢は、真っ当な思考にあらず。そのような業者に依頼しても、しっかりとした施工をすることは考えられません。また、何かあれば「会社をつぶしてしまえば良い」などの雑な思考が見え隠れします。
「タダより高くつくものはない」などのことわざもあるように、これら甘い言葉には矛盾が無いかをよく考えた上で依頼する必要があります。
「火災保険で雨漏り補修や外壁塗装が0円」という話が出た場合は、注意が必要です。すぐにその業者で契約するのではなく、他にも見積もりを取り、話す内容を比較することをオススメします。
火災保険を使って修理した事例(屋根修理)
2018年、大阪府に台風が直撃し、かなり広い範囲で被害が出ました。知り合いの保険会社から聞いたところ、都市に直撃した台風被害額は通常3,000億円程度。
ところが大阪府に直撃した台風では保険請求額(風水害)は1兆円を超えたとの事でした。この時の被害がいかに広い範囲に及んだかが分かります。
事例として挙げる案件は、外壁や屋根塗装ではなく、屋根の修理です。屋根材およびルーフィング(2次防水)の破損が広い範囲であったことで保険の適用となりました。周辺の家もブルーシートで屋根を覆い隠すように応急処置がされています。
写真:屋根にブルーシートで応急処置
もし、台風被害を訴えても周囲の家に被害が無ければ、保険会社は家の経年劣化による破損と判断した可能性も否定できません。
要するに台風による風水被害は、周りの家は何とも無く、1軒だけ被害が出るのは、「別の要因が絡んでいた」と考えるのが妥当だからです。
ただし、2018年の台風被害はあまりにも広範囲である事から、個々の被害状況に対して査定員を導入しきれ無かったこと、そのため各保険会社は写真と見積書の提出で審査をおこなう事になりました。
同じような被害状況であっても全額保険が払われた案件もあれば、見舞金程度しか認められなかった案件と様々です。これは個人の保険加入条件や被害状況を査定する保険会社の査定判断(見積書と写真)が違うためです。
写真:屋根材撤去後の屋根下地
写真:施工完了