雨漏りか?結露か?の確認のため調査(検証)
今回のお話は、親しくさせていただいている一級建築士さんからの調査依頼です。
どのような内容かというと、野地裏が広範囲に濡れており、この原因が雨漏りであるか?結露であるか?の確認のため、調査(検証)してほしいという依頼です。
結果から言うと、雨漏りが原因で結露もしていました。
居住者様からの相談内容
居住者A様は数年前に新築で住宅を購入し、最近になって屋根に太陽光を設置しようと考え、業者に相談したようです。相談された業者は、屋根の強度を確認するために小屋裏に入り、野地板と垂木の状況を目視したところ、野地裏が広範囲に濡れていて腐朽している事に気が付いたことが始まりです。
A様は怒り心頭気味で建てた建設会社に連絡し、雨漏りであることを伝えましたが、状況を確認した建設会社は結露であると主張。つづけて「雨漏り修理には値しない!ただし、換気措置は行う。」とのこと。
A様は建設会社の主張に驚き、困り果てて弁護士さんに相談しました。そして、弁護士立ち合いの元、一級建築士(2名)と私を含めての検証を行うことになりました。親しい一級建築士の先生だけならともかく緊張感があるというか、どうも居心地が・・・(笑
さて、今回の建設会社の「結露である」という主張ですが、伝え方はともかくとして、まんざらおかしな話をしているわけではありません。というのも、小屋裏の断熱材は天井断熱(屋根の野地裏に施工)ですが、小屋裏から外部に湿気を排出する換気口や仕組みが無い状態です。
この場合、外気と野地裏の断熱材の温度差から結露が起こりやすい状態になり、結露である可能性も否定できません。また、A様自身が雨漏りを確認していないことから さらに今回の調査は不確実な要素が多いといえます。
小屋裏(屋根裏)結露の豆知識
少し話が専門的で分かりにくいため、小屋裏(屋根裏)結露の知識について説明します。図1の紫線部分に断熱材が施工されている事を天井断熱といい、野地板に断熱材を施工する事を屋根断熱(赤線部分)といいます。
図1
天井断熱の結露
冬場に室内を温める事で暖気(熱)が上昇し、天井を抜けて小屋裏(屋根裏)に到達します。小屋裏は外気の影響を受けて冷えているので、湿った暖気が小屋裏の金属等に触れて冷やされ、野地裏や金属の表面で水滴となって結露をおこします。滴下する事で天井にシミ痕ができることがあります。
屋根断熱の結露
室内の温まった暖気が小屋裏の屋根断熱まで達した状態で、外部の屋根材によって冷やされると、野地裏(野地板)と断熱材の間で結露を起こします。
このような結露を防止するために、新築工事のときに一般的には軒先吸気(軒天有孔板)・ガラリ等の設置により、外気を取り入れ野地板と断熱材の間に通気層を設け、さらに換気棟から暖気や湿気を外部に排出する仕組みを作ります。
しかし、今回の案件は施工されていませんでした。
すが漏り
地域により、すが漏りの意味や内容が少し違います。一般的にすが漏りの意味は、寒さの厳しい地域で冬場に湿った暖気が水滴となり野地裏で凍り付き、春になると凍り付いた水分が溶け出して雨漏りのような現象が起こることを言います。これも結露の一つです。
この写真は、(株)ハウゼコの換気棟 スピカです。少し補足ですが、上記写真(スピカ)から換気棟のイメージはこれでつくでしょうか?現在は、昔の隙間風が吹くような家の造りは少なく、気密性が高く断熱性の高い設計がされていることから、このような知識や商品も欠かせません。
雨漏り診断士がよく使う「悪魔の証明」とは?
「雨が漏れていない」ことを証明する、または雨漏り具象を確認することなく「雨が漏れている」ことを証明するのは非常に困難なことです。そのため、雨漏り診断士の間で「悪魔の証明」という言葉がよく使われます。
たとえば、大阪に狸がいることを証明するには狸を一匹捕まえれば済むことですが、狸がいないことを証明するには大阪中のありとあらゆる地域をくまなく探さなければならなくなり、現実的に困難であり、証明することは不可能に近いです。
今回A様が雨漏りを確認していない状況では、悪魔の照明に近い内容であるともいえます。もし、10時間の散水調査をしても雨漏りが確認できないとします。では、「この家は雨漏りしていませんね。」と言い切れるでしょうか、もしかしたら11時間の散水をおこなえば雨漏りが確認できるかもしれません。
そのため、雨漏り具象が確認される事が浸入口や原因を検証する前提条件になってくるのです。もちろん、親しくお付き合いをさせていただいてる一級建築士さんも雨漏りのエキスパートなので、ここら辺の前提条件をよく理解されています。今回の検証を実施する事になったのは、結露にしては余りにもひどい状態である事や建物の納まりに無理が多いことから、「雨漏りが原因では?」という話になりました。
調査当日、一級建築士さんから「坂元さん、頼むよー!」てぇ、笑いながら言われた。難しいこと、分ってるくせに・・・(^^:)
散水調査の結果
散水調査は、浸出口や外部の不具合箇所・建物の構造を吟味しながら、雨水の浸入経路を仮説づけて、散水ポイントを決めていきます。しかし、雨水の浸出口が確認できていない上に野地裏は断熱材と湿気で、水滴が溜まっており浸出の判断が難しい状態です。
普通サイズの家ですが、調査ポイントを絞り込むには途方もなく広い屋根に見える。頭の中の仮説をイメージすると、まるで苦手な数学の公式のような感じで暗号状態…あかん…あかんやん…仮説が成り立たんやんか・・・(^^:)
散らかった頭の中を整理しながら手順を考える
1.小屋裏に上がり野地裏の腐朽 がひどいところを探す。
2.さらに、腐朽が酷い外部の納まりが悪いところを探す。
色々考えた結果、シンプルにこの1点を絞って検証を試みることにしました。しかし、午前中は浸出しないので食事を取る間もなく、すぐに検証開始。
こうなると、焦りというかボヤキに近い状態で葛藤が始まる…「なんで通気も考えずに屋根断熱してるんやろう…そもそも天井断熱でえーやんか…」などと勝手な事を考え出す…(笑
13時ごろに浸出を確認。関係者に迷惑が掛からぬよう、写真で多くを解説することは出来ませんが、外部の棟包等から雨漏りを確認しました。この後、他のポイントからも浸出を確認しました。
今回の雨漏りのメカニズム
1.雨漏りが発生する
↓
2.屋根断熱(グラスウール)に雨水が吸水する
↓
3.断熱材に吸水した雨水が温まることで気化
↓
4.換気が無い事も重なり広範囲で結露を繰り返す
分かれば簡単ですが、そこに辿りつくまでが大変、正直、おなか一杯の気分であった。が…先生から「坂元さん、次の案件があるんだけど。」と、話を切り出してきて「〇×△のややこしい話で、×〇〇△の案件を手伝ってくれる。」
私「はっ、はい。・・・(;’∀’)」
また、とんでもないボリューム案件が舞い込んでくるみたいです。普通の雨漏り調査会社では体験できない話ばかり、ブログネタには実に面白いと思う・・・のだが・・・(^^:)