代表的な3つの雨漏り調査方法を解説
雨漏り調査にはいくつも調査方法があります。このページでは、現在主流の以下3つの調査方法を説明します。
1.散水調査:雨漏りの侵入箇所であろう位置に水をかけ、浸出口から雨漏りを再現させる調査方法
2.赤外線調査:表面温度の温度差を確認できる特殊なカメラを使って調査する方法
3.蛍光塗料調査:雨漏りの侵入箇所であろう位置に、蛍光塗料を混ぜた試験水を散水して場所を特定する調査方法
1つ1つ説明していきます。
目次
調査方法1.被疑箇所に水を直接かける散水調査
1番の散水調査は、雨漏りの侵入箇所であろう疑わしい位置(被疑箇所)に直接、試験水(水)をかけて、浸出口から雨漏りを再現させる方法です。
散水調査のメリットとデメリット
■メリット
検証により浸入経路を確定して余分な工事を減らすメリットがあります。
■デメリット
散水調査のデメリットは、調査する人の能力により調査時間が長くなることです。また、調査時間が長くなると使う水の量も増えるので、お客様の負担が増えます。
例えば、東大阪市の水道料金は一日水を使ったとして、10立方メートル(1m×1m×1m×10)ぐらいの計算で考えると、お客様の負担は、調査費用+1日の水道代(1,216円)になります。
動画で実際の散水調査を紹介
私が普段調査した様子を動画に撮りました。動画で見ると散水調査がどんな調査かわかりやすいと思います。
この建物は、3階建て、木造軸組み構法、壁はサイディング通気工法です。新築時から雨漏りがあり、原因が16年間分からずに悩まれていた案件です。
この散水調査では、雨の浸出口である1階の和室サッシ上枠から雨漏りを再現させています。
この物件の調査結果
木造の場合、セオリーで考えると1階の雨漏りは2階に原因があると考えますが、今回の案件は違いました。調査結果から浸入口は3階のシーリングの破断箇所であることが分かりました。
3階の浸入口から雨水が入り、1階のサッシ廻りの防水処理(透湿防水シートやサッシ廻りの防水テープ)に不具合があり、1階の壁内部の不具合箇所に達する事で、和室サッシ上枠から浸出(雨漏り)していました。
調査する際は「どこに不具合があり、どのような浸入経路をたどるか?」などの仮説を組み立てる必要があります。闇雲に散水調査を行うと、迷路に迷い込み、誤診の元となります。
ようするに、積み重ねた調査・修理の経験が生かされた上で雨漏りが再現されます。以下が再現された時のお客様の感想です。
Very.Good!!16年目でやっと雨漏り部分を2~3カ所も特定でき思わずうれしいやらかなしいやら!!さすがプロ。サラさんを指名した妻に感謝です。当然サラさんに大きな感謝です。ありがとうございます。
コンクリートの散水調査の動画
もう一本、別の案件のコンクリート散水調査の動画です。被疑個所に散水することで再現および浸入口(不具合や原因)を確認します。
調査方法2.特殊カメラで場所を特定させようとする赤外線調査
2番の赤外線調査は、表面温度の温度差により浸入口を推測する調査です。この写真は赤外線カメラ(サーモグラフィ)による撮影です。
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この写真から、どの様に浸入口を推測するかというと、
・青色に見える箇所が、周りより温度が低い、つまり雨水が流下した箇所と推測されます。
・赤色や黄色は、基本的な不具合は無いものと推察されます。
実際に写真の例を見ながら解説すると、天井は温度が高い赤色を示している事から、換気口直上から雨水が流下していないと考えられます。
また壁も、平均的な温度帯である黄色を示している事から、外壁にも基本的な不具合は無いものと推察されます。
青色の貫通部(換気口)周りに不具合があり「この部位が浸入口ではないか?」と、仮説を立てることが出来ます。これは、あくまで仮説の域であり、浸入口を証明できたわけではありません。
ちなみに、天井が黄色ではなく赤色なのは、夏場で天井裏に熱気がこもり温度が上がったためだと推測します。
私は赤外線カメラ(サーモグラフィ)を購入し、赤外線建物診断技能師の資格を取得して調査に取り入れています。ただし、散水調査を基本調査としサポート的に赤外線カメラを使用しています。
理由として、お客様が赤外線カメラのノイズや画像解析に対する知識を持っていないことが多く、本当に映し出されている画像が浸出原因につながるか「分からない」もしくは「不安になる」からです。
赤外線カメラは、長所を生かしつつ、散水調査の補助的な役割がベストだと考えます。
調査方法3.水に蛍光塗料を混ぜて場所を特定させる調査
3番は蛍光塗料を使った調査です。雨水の入り口であろう疑わしい位置(被疑箇所)に、蛍光塗料を混ぜた試験水を散水して場所を特定しようとするものです。
蛍光塗料を使っている事で、暗い天井裏であっても浸出した試験水にライトをあてると色別に発光する事から、浸入口の誤診の可能性が下がります。
たとえば、被疑箇所が、A・B・Cの3か所があるとします。この3か所のAには赤い蛍光塗料、Bには黄色い蛍光塗料、Cには青い蛍光塗料をそれぞれ散水します。
浸出した試験水の色が赤色ならAの位置が浸入口になり、青色ならCが浸入口といったように散水した浸入口を検証します。
調査方法より大事な業者選び。良い業者を選ぶ3つのポイント
雨漏り調査には、色々な調査方法があるため、お客様に「どの雨漏り調査方法が優れている?」と聞かれる事があります。
正直なところどの調査方法を選んでも間違いは無いと思います。けして、いい加減な話をしているのではありません。あくまでも調査方法は原因を確認する一つの手段でしかないからです。
例えば、性能の良い車を持っていても、100%の力を発揮するには車の性能だけでなく運転する人の能力にも左右されます。同じように、調査方法よりも調査する人の調査能力や知識の高さが重要です。
業者の雨漏りに関する知識や調査能力の良し悪しを判断するポイントは3つあります。
ポイント1.雨漏り調査・修理の件数の多さ
良い業者を選ぶには、会社自体の「雨漏り調査・修理の件数をどれほど経験しているか?」が重要です。会社自体と書いたのには理由があります。
雨漏り調査を行う会社は、雨漏り調査・補修の団体に加盟していることが多いです。私も雨漏り110番という団体に加盟しています。
よくあるのが「調査実績●万件!」と書いていて、よく見ると所属団体の合計と書かれていることがあります。そのため、所属団体の事例より、直接調査に関わる個人のホームページやブログの詳細をよく見て、専門知識・調査能力を確認してください。
特に屋根・壁・防水をバランスよく修理事例があることが重要です。そもそも、新築時の建築現場では、屋根工事は瓦屋さん、壁なら塗装屋さん、防水なら防水屋さんと各専門の職種(専門の職人さん)に分けて工事をする事で効率性(コスト)を追求して家を完成させています。
この流れで、通常の経年劣化によるリフォーム工事(瓦が割れていたら瓦屋さん・壁が劣化していたら塗装屋さん)なら各種の専門の職人さんに発注する事に問題はありませんが、雨漏りは新築時から抱えている不具合の修正が必要であり、従来の縦割りの職種(専門職)では対応しきれない傾向にあります。
「えっ!専門の職人(縦割りの職種)さんの方が良いのでは?」と思われるかもしれませんが、ここが雨漏り修理の難しさです。
水は浸入した箇所にはとどまりません。屋根から浸入した雨水は、壁内部やバルコニーの防水面まで流下する事もあり、防水の連続性(屋根・壁・バルコニー等)を確保して外部に排出させる仕組みが必要です。なので、バランスよく修理事例があることをよく確認してください。
ポイント2.調査も修理も自社でできる会社であること
雨漏り調査や補修を行う会社の中には、調査だけや修理だけといった形態もあります。しかし、調査と修理は表裏一体です。修理する知識を持ち合わせているから調査ポイントを絞り込むことができ、逆に調査に関わったことで修理ポイントを的確に判断できます。
どちらか一方の知識が欠けても経験値が高いとはいえません。
ポイント3.資格を持っていること
3つ目は、雨漏りに関する何かの資格を持っている事も判断基準になります。けして、資格がなければ「雨漏りが治せない」というわけではありませんが、お客様から見て資格の有無は最低限の知識は持つであろう目安になります。
雨漏り原因調査の費用
雨漏り原因調査費用は、仮設足場の設置の有無、鉄筋コンクリート造や木造でも調査費用が変わります。基本、現地でお客様にお会いし、雨漏り状況やヒアリングを行った上で費用の提示をおこなっています。
目安としての例を挙げるなら、木造住宅2階建、足場が必要ない場合で5万~12万(税別)です。弊社では、現地の下見や目視確認・現地でのヒアリング等の料金は頂いていません)
まとめ
■原因を特定する3つの調査方法
1.赤外線カメラは、長所を生かしつつ、散水調査の補助的な役割がベストだと考えられること。また、浸入口の証明とする事は難しい。
2.散水調査は、散水前の雨の浸入口を絞り込める能力が重要であるため、蛍光塗料を使った散水調査も通常の散水調査と同じだと考えられます。
以上の事から、散水調査・赤外線カメラによる調査・蛍光塗料を使った調査などがありますが、結果的に個人の調査能力が原因追及に大きく左右されます。
■良い業者を選ぶポイント
1.会社自体の「雨漏り調査・修理の件数をどれほど経験しているか?」が重要であり、団体でなく個人のホームページやブログの詳細をよく見る。
2.調査と修理の両方ができる業者を選ぶこと。どちらの知識が欠けても、経験値が高いとは言えない。
3.雨漏りの何らかの資格を持っている事が、最低限の知識を有する。
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