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木部塗装の剥離について

屋根下の破風板や木部の格子など
塗装が剥離している状態をよく見かけますが、同じ外部でも
社寺(神社・仏閣)の木部の剥離状態を見かけた事は無いと思います。

もちろん、個人の一般住宅と社寺(神社・仏閣)では
メンテナンス頻度の違いがありますが、実は材料の選択や職人さん
基本的な考え方に大きな違いがあり、木部塗装の耐用年数に差がでます。

「一生の内に3度、社寺の仕事に携われば職人冥利に尽きる」

言われるぐらい一般的に経験することの無い仕事ですが、そこには
先人の知恵が多くあり、現代の建築塗装にも十分通じる考え方をご紹介します。

木部の塗装

 

1)塗装するにあたっての木の性質

木材は雨水により水分が浸透し腐食すると言われますが、そもそも
木は地面の水分を吸い上げて成長する生き物であり、普通に考えれば腐食は
簡単に進みません。(例:少し古いですが木の船)

こう考えると
どのような箇所が腐食の原因になるか、どうすれば木が長持ちするかは、
塗料の樹脂を語る前に、基本的な木の性質を知る事が施工の重要なポイントになります。

以前、弊社におとずれた木材塗料メーカーの
技術者が木材塗料の樹脂について自社製品の優位性について語っていました。

そのことは苦労をして作った樹脂であり
製品について語る事は何の問題はありませんが、
「木のどこに塗布量を多く塗れば木が長持ちするか?」
質問を投げかけた所、まったく理解していなかったようです。

木材塗料の技術者が
木の特質や性質の本質を知らずに製品開発をしている事に
少し驚きましたが、決してメーカーの技術者がいい加減ではなく
おそらく、塗料メーカーであっても新しい事を取り入れていくうちに
伝統的な塗装技術や考え方は継承される事なく陳腐化したものと考えられます。

てぇ、・・・話の趣旨からそれるので本題に・・・(^^)

木部の塗装

上の写真は社寺で木口(白)を塗装したものですが
これは社寺のデザインで木口を白く塗装したわけではありません。

木部の腐食は木を加工した切り口(木口)より
雨水が浸透しやすく腐食が最も早く起きる部位だからです。

その理屈をよく理解した上で
木部塗装を施工するのと、知らずに木部を塗るのでは
腐食や耐用年数の中身に大きな差となり、はっきりと出てきます。
くどいようですが、塗料の樹脂を語る前に加工した切り口の処理が最も重要なポイントです。

 

2)現在の塗料と選択

まず、一般的に
木部に塗る塗料はオイルステンOP(ペンキ)があります。
どう違うかというと、オイルステンは木部に浸透して木目が残る
形で着色しOPは木部の表面に塗膜をはり木目を消す形で着色します。

テーマである剥離がおきるのは
表層に塗膜が形成されるペンキ(ウレタン・シリコン・フッ素)を
塗ったもので、これらの樹脂の品質の良し悪しは関係なく塗料の剥離には
対応できません。

なぜなら、気候により木部は膨張と伸縮を繰り返し
なおかつ、紫外線などの劣化により表層の塗膜が追随できずに破断(割れ)するからです。

塗膜の破断部分から雨水が浸入し
水分を含むと更に伸縮の幅を広げ、木部と
塗膜の密着に悪影響
及ぼすことにより塗膜の剥離につながります。
 

もし、表層の旧塗膜(OP)を完全に除去できるのであれば浸透型
防腐剤入りオイルステンを使用すれば剥離による心配はありません。

ただし、OPの旧塗膜が残っている上から強引にオイルステンを塗布すると
OPの木目が消えた所とオイルステンの木目がのこる部分がムラになり見栄え
悪いので、OPの旧塗膜が若干でも残る場合はオイルステンの使用は要注意です。

 

3)旧塗膜が残る場合の木部の塗り替え

冒頭で述べたように
紫外線や雨水にさらされるという一般住宅の木部と
同じ条件でも、木でできた神社の鳥居はボロボロに剥がれる事はありません。

それは、明確な塗布材の考え方の違いがある。

その違いは
木部の伸縮に影響を受けにくい素材を使っている事や水分を逃がす
顔料で色付けされており、一般の建築塗装と大きな考え方の違いがあります。

圧倒的に現在の方が、
着色する樹脂に恵まれているにも関わらず、
この差は歴然で「昔の人の知恵は素晴らしい」の一言につきます。

弊社では社寺塗装の基本的な技法を学ぶ機会があり
現在の樹脂を取り入れて工夫を重ね、2005年3月に木口(白色)に塗装
同年に赤門の塗装(右下の写真)を施工しましたが外部にさらされている
環境下でも、2015年現在まで一切の剥離はおきていません。

木部の塗装

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木口塗装(白色):写真                門(朱色):写真

ただ、一般住宅で
社寺(神社・仏閣)の仕様を組むことは
いくら剥離がおきないといっても、コスト面で考えると現実的とは言えません。

その事から弊社では
さらに試行錯誤を繰り返し、コストを抑えながら
剥離の起きにくい仕様で木部塗装を仕上げてい技法を確立させました。
金額ベースで一般的な木部塗装の2割~3割増し程度で施工ができます。

塗料は あくまでも半製品であり、
現場で扱う人間の経験や施工方法・考え方で、仕上が大きく左右される商品です。
その中でも、木部は特に塗膜の寿命や仕上がりに違いが出ます。

長々と説明をしましたが
私の説明で理解していただけたでしょうか・・・(^^)

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