大きく分ければ壁からの雨漏りのジャンルに入りますが、今回は換気口の雨漏りに絞って話をしてみたいと思います。私の記事(ブログ)等で換気口からの雨漏りを取り上げる事は少ないと思います。
というのも、雨仕舞のプロでなくても建築にかかわる方ならば予想がつきやすく大きく取り上げる必要が無い項目だと考えていました。
また、ホームページで取り上げる内容は、もちろん第一に私自身の集客が前提ではあるものの、遠く伺う事が出来ない地域の方で困っている人のヒントになればと思い情報を発信しています。なので、少し難解な雨漏りを中心に解説をしてきましたが、意外に雨漏りが再発する事例が多い事に気づき記事として今回まとめてみました。
ノウハウの開示は「自分の仕事を減らすよ。」とアドバイスしていただける方もいますが、世の中の雨漏りをすべて私が請れるはずもなく、私の話がヒントになり少しでも世の中の雨漏り被害が減るならば幸いです。
基礎中の基礎になりますが事例を上げて換気口について解説していきたいと思います。
目次
換気口の形状
写真上の壁にある丸型タイプの換気口が検証の結果、浸入口になる事が確認されましたが、この形状、強風雨では垂直方向からの雨水が浸入します。
なので、深型の換気口に交換することで雨水の浸入を防止する方法がベストとなります。また、蛇腹(ジャバラ)の取り付け方など、他の要因についても考慮しなければなりません。
換気口につながる蛇腹(ジャバラ)
換気口の修理に再発する原因の多くは、深型換気口の変更のみで終わること。出来れば点検口を設けて蛇腹(ジャバラ)の確認を取る事が必要です。蛇腹(ジャバラ)とは換気を目的として室外に空気を排出す配管をジャバラと呼びます。
写真:銀色の配管が蛇腹(ジャバラ)
ジャバラを室内側に下勾配で取り付けている事があり、雨水がジャバラ内に浸入すると角度にそって室内の天井や壁から浸出します。
なので、修理に関しての注意点は換気口と蛇腹(ジャバラ)をチェックし、必要であればジャバラも取り換える事が望ましいと考えられます。では換気口をどのように施工すれば望ましいでしょうか?貫通部(壁)の換気口付近で蛇腹(ジャバラ)を上向きに整形して内部に雨水が貫通部から浸入しても上勾配である事から外に押し戻されて排出される仕組みになります。
写真:ジャバラを上勾配に整形
換気口廻りの壁
通気層の無いモルタル・ALC・コンクリート壁の場合、換気口廻りの壁クラックや欠損(浮き)を確認して雨水が壁内部に溜まる事を防ぎます。ただし、サイディング通気工法は壁内部に雨水が滞留する事は基本的にありません。
写真:ALCの欠損部
上の写真は、換気口の真上に壁の欠損部(壁の浮き)が確認された事から撤去しました。欠損は換気口である貫通部まで達しており、欠損内部に溜まった雨水も貫通部に流下する事が分かりました。
壁の補修が終わると換気口の取り換えになります。換気口と蛇腹のつなぎ目に隙間があるというか、寸足らずの蛇腹であるため換気口と一体化が出来ていなかった。この事から、貫通部に達した壁内部の滞留水が隙間から室内に浸入するルートが出来たようです(下の写真)
壁の剥離や欠損は補修する段取りではあったものの、決定的な原因はやはり、壁・換気口を撤去してみないと確認出来ません。なので、修理する時は注意深く撤去しながら決定的な原因を確認することが大事です。そもそも、不具合が出る工事なので経験値の高い職人さんの施工とはかぎらず、もしかすると入社したばかりの見習い工が施工した可能性も含めて修理に挑むこと事が必要です。
注意:屋根に近い換気口は小屋裏の点検が必要
屋上やバルコニー直下なら防水の確認も必要
換気口廻りのシーリング(コーキング)
最も単純な雨漏り原因ですが、換気口廻りのシーリング(コーキング)破断が考えられます。
ALC・コンクリートは、換気口と壁の取り合いはシーリングのみの止水に頼っていると言っても過言ではありません。
貫通穴を施工する際、少し下向きに設ければ多少の雨水が貫通穴に浸入しても外部に押し戻されて排出されますが若干でも上向きに施工されるとシーリングが破断することで貫通穴から雨水が室内に浸入する事になります。ただ、貫通穴の角度は新築時に施工されたものなので改修工事で改善することは躯体を痛める可能性があり、貫通穴の角度を変えることは避けたほうがよいでしょう。(ALC・コンクリート)
注意:サイディングに関しては上記の説明は当てはまら無い 事から、下記で紹介します。
開口部(貫通部)の雨漏り(換気口・配管パイプ)とシーリング(コーキング)に頼らない雨仕舞
サイディング通気工法はALC・コンクリートとは雨水に対する対処法が違うものだと認識する必要があります。どう違うかを簡単に説明すると、サイディング通気工法は壁を一次防水とし、壁内部の防水紙(透湿防水シート)を二次防水として雨水に備えていますが、ALC・コンクリートには基本的に二次防水の考え方がありません。ただし、ALCの場合、一部のメーカーが最近になり、通気層や二次防水の概念を取り入れ始めたようです。
この事から、同じ貫通部であってもALCやコンクリートとは対処法が異なり、話を分けて考える必要があります。それでは、ここからはサイディング通気工法の貫通部についての話をしていきます。
シーリング(コーキング)の限界
シーリングの役目は建物が揺れる事で外壁パネルやサッシ・配管が揺れてお互いが痛まないよう様に建物の揺れを吸収しています。なので、ある程度のクリアランスが必要であり、建物が揺れる以上破断しないシーリング材は存在しません。
高耐候性シーリング材を「30年は持ちますよ」と営業している外装業者がいるようですが、この30年とはシーリングの退色(色抜け)であったりシーリング間どうしの割れについての話で、大事な事は壁とシーリング材が破断する界面剥離の年数が長く起きないことが重要です。
建築業界の悪しき習慣は、なんでもシーリング材に頼ろうとする傾向が強く、使ってはダメであろう箇所までシーリング頼みになっている事、そのような箇所が、後々雨漏りとして問題にを発生させる原因になります。なので雨漏り修理として気を遣う所は、出来る限りシーリングに頼らない雨仕舞を考えることがポイントです。
開口部(貫通部)の雨仕舞
シーリング(コーキング)が破断すると室内に雨水が浸入しやすい部分が窓・換気口・配管など壁の貫通部です。理由は、 二次防水の処理が甘い事が原因です。写真1は透湿防水シートを貼る前に防水テープ(黒色部分)で貫通部を処理しています。
これでは、シーリングが破断して雨水が透湿防水シートに流れ込むと早い段階で劣化が進み、雨漏りの原因になります。そのため、近年は写真2のように透湿防水シートを貼ってから更に防水テープで処理されることが多くなってきました。
では、これで十分かというと、そうでもありません。一年中、シーリングが破断した場所から雨水が流れ込むと数年もあれば防水テープ(写真2)を突破して、室内に浸入する力が水にはあります。なので、弊社では二次防止の補強として、更にグリーンのカバー部材等(写真3・写真4の赤矢印)を取り付けます。これにより、既存の貫通部の施工方法より防水性能が上がります。(ただし、あまりにも長いシーリング破断の放置は、透湿防水シートや胴縁の腐朽につながります)
DIYで補修する方へ
DIY(建物を自分自身で無料で補修)で換気口の交換に挑戦するお客様もいると思うので、必要なポイントを箇条書きしておきます。
■注意
ただし、安全の確保される条件で施工する必要があり、決して無理はしないこと。危険だと感じたらチェックポイントを説明して業者に相談・依頼すること。ALC・コンクリート壁に限り、間違ってもサイディング壁の換気口交換は業者に依頼すること
- 換気口の形状や取り付け方法の確認(一般的にシーリングによる取り付けの上に塗装)
- 換気口につながる蛇腹(ジャバラ)の取り付け方のチェック
- ALC・モルタル・RC造の換気口廻りの壁の不具合(サイディング壁は含まない)
3番のサイディングは壁内部に通気層と防水層に分かれている事から、壁内部で雨水が滞留する事はありません。(直貼り工法は別)壁構造や納まり等の説明をすると「壁の雨漏り」と内容が反復してしまう事から、換気口(開口部・貫通部)の話の中では触れないようにしましたが、興味のある方は合わせて読んでいただくと更に理解が深まると思います。
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