「シーリング(コーキング)で孔(あな)を埋めて修理をしてください。」と、お問い合わせがありますが雨漏り工事に関わってきた私には安易な返事をできない理由があり、今回は、「なぜ!気前よく返事が出来ないのか」、その理由についてお話していきたいと思います。

まず、職人さんが同じ材質を使って同じ図面で家を建てたとしても大量生産の様に寸分変わらず同じものが出来る訳ではありません。

これは「いい加減に工事を進めた」とか「手を抜いている」という事ではなく、その時々の状況により少しずつ違いがあり良い意味でいう手仕事の味のようなもので人それぞれ こだわりや個性があるように家にも個人の癖のような納まりが出てきます。

この癖のような納まりを雨漏り調査(非破壊検査)で原因を絞りこみ修理する段階で屋根・壁を解体してコアな原因を明らかにし、不具合を修正していきます。

実際どのような工事をするのか、なぜシーリング(コーキング)では無理があるのかを事例を挙げて解説します。

事例1

散水調査により三階サッシと壁の取り合いにひび割れ(クラック)から雨水が浸入し、一階サッシ窓枠上部から浸出することを確認しました。

サイディング壁のひび割れ

ここでシーリングのひび割れを補修すればよいと考えるのは荒っぽい話で、正しくは一階サッシ廻りかそれ以外の透湿防水シート(二次防水)の納まりに問題があることで雨漏りが発生していると認識する必要があります。

要するに、ひび割れを補修しても他の浸入部位から透湿防水シートの不具合箇所に到達すると、やはり雨漏りは発生する、またはシーリングが経年劣化で切れても同じく雨漏りは止まりません。

このイタチごっこを繰り返す間に主要な柱や梁にもダメージが及ぶ危険性が高くなります。

なので、正統な修理方法は一階から三階までサイディングを取り外し壁材内部の胴縁や透湿防水シート(防水紙)も撤去し、不具合を解消していきます。

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透湿防水シート(防水紙)の撤去

下の写真は雨漏りがあったサッシ上部の透水シートを撤去した状態です。
よく見ると合板(耐力壁)を張り付けていない柱と梁が交差する位置に見えます。

三階にあるサッシ取り合い不具合箇所の浸入口から、透湿シート(防水紙)の内側に雨水が廻りこみ、柱と合板の隙間を流下することで雨水が孔に浸入していた事が明らかになりました。

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なので、孔に埋め木をしてシール(コーキング)で合板と柱の隙間を埋め、更に防水テープで二重に浸入を抑える措置をとりました。

 

ここまでが二次防水の透湿防水シートを張る前の段取、コアな原因を修正していく事で、今後、透湿防水シートの経年劣化が進んだとしても簡単に雨漏りが発生しにくいよう、予防する環境を整えました。

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その後、透湿シート(防水紙)を張り、胴縁(木材)を取り付けて壁材の内部に空間を作ることで水が外部に排出する雨仕舞を作ります。

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これがサイディングの通気口工法と呼ばれるもので、現在、住宅の外壁材(サイディング)は通気工法が主流です。

サイディング壁内部

透湿防水シートに不具合がある場合、シーリング(コーキング)で孔を埋めたとしても、サイディングパネルの隙間等から不具合箇所に雨水が到達する可能性があり、そうなると、やはり雨漏りが発生する事になります。

事例2

雨漏りが発生したことから浸入口である笠木天端ビス納めとジョイントにコーキング処理が施されましたが、数年後、雨漏りが再発した事で調査及び修理依頼をいただきました。
(コーキング処理は他の業者)

やはり笠木天端のビス納めから雨水が浸入している事を確認。

コーキングの雨漏り修理による被害

笠木やパラペットを解体したところ雨漏りによる不朽が進行し、かなり大変な状態でした。

コーキング(シーリング)の穴埋めによる雨漏り

パラペット(立ち上がり)を外すと合板、横架材(おうかざい)まで腐朽が進んでおり構造体も修理をすることになりましたが、もし初期の段階で不具合を修理していたら横架材(構造材)まで被害が広がる事は無かったはず。

また、最初に請負をした業者は「非常に長持ちするシーリング材(故キング)を使用するので大丈夫」とのことでしたが、地震の多いこの国で、何トンもある建物のジョイントの揺れに耐えるようなシーリング材が果たしてあるのでしょうか?

私の思い浮かぶ性能の高いもので水族館のガラスと壁の取り合いに施工する1mあたり数十万もする特殊なシーリング材で一般的な建築に使用するシーリング材では、それほどの性能を確保できるものはありません。

もし、そのような特殊なシーリング材を使用するのであれば、普通に不具合部を解体して、修理するほうが効率が良いはずです。

注:ただ、誤解が無い様に補足すると部位によりますが、すべての応急処置(シーリング)が失敗するというわけではありません。

雨漏りが発生した場合のシーリング補修について(まとめ)

  1. シーリング(コーキング)による施工は雨漏り修理ではない
  2. 軽減措置(雨水浸入を少なくする)か一時的な応急処置である
  3. 室内の雨漏りが止まったとしても、壁や屋根内部で雨水浸入する事による躯体ダメージの可能性
  4. 再発したときは初期段階より大きな支払いが必要になるリスク
  5. シーリング材(コーキング)はどれだけ良いものを使用しても必ず破断する

雨漏り修理にお金をかけたくないというのは当然だと私も思います。
また、上記でお話したリスクを理解した上でシーリング(コーキング)による工事を望まれるのであれば、それはそれで一つの選択幅かもしれませんが決して良い施工方法ではなく、多くの雨漏り修理を経験した私にとって「安易な返事が出来ない理由」となります。

普段、他の業者の施工を取り上げて良い悪いの話はしないようにしていますが、「雨漏り修理数万円」的な集客目的のキャッチフレーズがあまりにも多いこと、また、お客様が分からないまま、大きな代償を払う可能性が高いことから、今回はあえて取り上げてみました。

決して、不安を煽るつもりはありませんが、雨漏り調査・修理は簡単なものではない事を理解し、お客様にとってベストな選択の手助けになれば幸いです。

以上を持って「コーキング(シーリング)は雨漏り修理になるのか」の話を終わります。

雨漏りか結露か分らない